2008/01/23

ネックに想う

工房に来るお客さんがいつもびっくりするのは、ギターや家具の用材をみせたとき。いわゆる「荒材」状態なので、へぇ~これがああなるんですかぁ。という具合。
今回のギターのネック材は、断面が約3cmX10cmで長さ3m弱のホンジュラスマホガニー。20年以上経っているのですごい外観をしている。ホームセンターのツーバイ材のほうがまだ上等に見える。これがあのネックに化けるのだから、びっくりなさるのも無理はない。

このホンジュラス産のマホは今はワシントン条約の規制対象となっている。つまり絶滅危惧種なのである。ギター材では他にもこの種のものがある。
自分は、規制前に伐採したものが偶然入手できるときは別にして、そういった危惧種を追い求めるのはもうやめている。

それでなくても元生物だったものを切り刻んでいるのだから。肉を食べるのも同じことで、そもそも人間の存在そのものが・・・・深刻になってきた もうやめよう。


-ネック作り方についての回答-

☆ネックは長さ1mぐらいの板一枚から作ります。ヒール部は何枚かを貼り合わせて、ヘッド部は斜めに切断したものをひっくり返して接着します(スカーフジョイントといいます)。
  ヘッドには白や黒の薄板をサンドイッチしながらヘッドプレートを貼ります。

加工前のネック


次に糸巻き部の加工をして、頭を成型して、ヒール部に横板を入れ込む溝を切ります。
自分はクサビを使って横板を固定するので、溝はテーパーになっています。
一応ここまで。あとは、ボディーと連結して指板を貼ってから加工します。

いちばん手前のネックのヘッドにはボディの裏・横板に合わせてメープル(カエデ)を貼っています。他の2本はローズウッド。
ネック加工後

2008/01/22

きょうは百舌

「百舌の高鳴き」という秋の季語の頃とはうってかわって今は静かなモズが、工房裏の柵の上にとまっていた。窓越しだったが開けると飛び立ちそうなのでかまわずシャッターをきった。
なかなか精悍な面持ち。猛禽類のようなクチバシが何を喰って生きてきたのかを物語る。体や頭の大きさからするとまだ子供かもしれない。

ちょっと振り向き美人風↓

工房に来たモズ2



フロックコートを着ているみたい、ころころしている。冬用の羽毛かな?

工房に来たモズ1



あっ、カメラ目線、気づかれたな。案の定、次の瞬間には飛び立った。

工房に来たモズ3
2008/01/21

雪の日のアオサギ

一年に一回あるかないかの積雪日。ちょっと嬉しくなってカメラでいろいろパチパチ。
淡いブルーと乳白色の金剛山と葛城山もきれいだし、白い田んぼから頭を出している野菜をみるとなぜか子供の頃を思い出す。♪さぎりきーゆる・・・冬景色。

いつも来るアオサギ君が今朝も来ていた。雪の中に両足をつっこんでいるが、そんなことは全く無関心を装っている。
そういえばこのあたりでもすっかり野鳥の数や種類が増えたようだ。
先日、散歩していたとき川岸にカワセミをみつけた。それは青でもなく緑色でもなく、とにかく美しい色をしていた。昔の代官のヘルメットみたいな大きな頭をしている。何度も水面めがけてダイビングを試みるが、残念ながら獲物をくわえた姿を見ることは出来なかった。
カメラを持ってくるべきだったと悔やんだ。でもそのおかげで記憶にきっちり残っている。と思う。

雪のアオサギ
2008/01/18

ギター力木の調整

先日、紹介したギター表面板(響板)の振動解析の続報です。

下はバスバー(力木)接着直後の波形です。板を吊るして振り子で叩き(タッピング)ました。
この時点では7本のバスバーの断面は長方形で、その高さも3mmほど大き目になっています。
上のグラフの横軸は時間(ms)、縦軸は音の強さです。
下のグラフの横軸は周波数(対数)、縦軸はその強さ(dB)です。
ちょっと小さいですが目盛も読めると思います。

調整前



次に、バスバーを削って成型したあとの波形を示します。下のグラフです。縦横のスケールは上のグラフと同じです。
これを見てわかることは、
 1.振幅が大きくなった ・・・ つまり大きな音になった
 2.500msを過ぎてもまだ振動している ・・・ 残響が長くなった
 3.周波数のピーク値の強度が大きくなった
 4.ピークを示す周波数がシフトしている
というように、成型の効果を確認することが出来ました。

工程的には、一応バスバーはこの状態にしておきます。
ちなみに最も高いピークを示す周波数は196.5Hzで、これは実音”ソ(196Hz)”に一致しており良くない状態ですが、これからハーモニックバー(横棒)などいくつかのパーツを接着するので、このピークはまだシフトすることが考えられます。

すべてのパーツを装着してから再び振動解析して、周波数のピークを目的の位置になるようにバスバーなどを再調整します。
目的の位置とは、最終的に完成した響板の持つ固有振動数(共鳴周波数)が実音の”ソ”とか”ファ#”とか”ソ#”とかにドンピシャに重ならない位置をいいます。

前作までの私もそうですが、多くの弦楽器製作者は耳と脳でこんなグラフを描きながら響板を調整しているのです。

今回のような可視化で、ある程度は音量やバランスを制御することが出来ると思いますが、前にも書きましたが完成したギターの ”音色が美しい” かどうかは全くの別問題です。
それはもっと神聖で神秘的な領域であるはずです。

調整後
2008/01/14

ばらの騎士

BS-hの番組を連れ合いが録画してくれていた。昨年末のNHKホール、ドレスデン国立歌劇場だ。指揮をしているのはファビオ・ルイージ。われわれのお目当てはゾフィー役の森麻季。

ハイトーンの美しさは期待どおりだった。彼女はいきなりウワーッと発声しない。目的の音量になるまでほんの少しの間がある。これがなんとも僕には心地よい。対照的なのは主役格を演ずるバス歌手で、彼は演技も歌もたいへん上手だったが、声が低いのにやかましい印象を受けた。この刹那ともいうべき間は、ひょっとしたら日本歌謡の特徴かもしれない。ただ、ちょっとでも長すぎると演歌になってしまうし、極めてイヤラシくなる。
この発声法、管楽器の音の出方に似ている。ピアノやギターとは立ち上がりが違う。名手はタンギングが上手だ。特にフルートとか尺八ではこれだけで雲泥の差を感じる。

森麻季に話を戻すと、テレビ放送で聞いても他の立派な体格の歌手に比べてやはり声量の差は認めざるを得ない。あの大きなホール、フルオーケストラを挟んで後ろの席まで到達したのだろうか。
それはそれとしても素晴らしい芸を見せてもらった。
2008/01/09

芽が出た

このところ暖かくて午後の工房は暖房なしでも20℃に達します。でも相対湿度は40%以下なので微妙な箇所の接着には気をつかいます。

この陽気に誘われたのか、昨年種をまいたシープレス(イトスギ)がいっぺんに発芽しました。背の丈はまだ2cmに満ちません。
このまま順調に育てばきっとゴッホの絵のような立派なイトスギになることでしょう。
だけどそのとき、間違いなく僕は風になっています。どうかこの木でフラメンコギターなんか作らないでください。今から遺言しておきます。

ゴマ粒より小さな種だったのに。不思議だなあ。驚異だなあ。大切にしなくては。

シープレスの実生
2008/01/06

Guitarreros de Andalucia

という本を頂戴しました。それも、本年初めてのお客様に。なんと幸運な仕事はじめではありませんか。ほんとうにありがとうございました。
実はこの本、前々からよだれが出るほど欲しかったのです。
スペインでもよほど買おうかなと思いましたが、高くてとても手が届かないのと無茶苦茶重いのであきらめたという経過もあります。

題名のとおりアンダルシア地方のギター製作家を網羅して紹介しています。A4大で434ページ。全ページがアート紙(上等なカレンダー用紙)、重いけど写真がきれいです。
スペイン語でさっそくにはバンザイですが、豊富な写真を見るだけで目的は十分達せられます。とは云え、スッゴイことが書いてあるかもしれないので、あのスーパー電子辞書のお世話になろうと思っています。

アンダルシアに限っているので例えばフレタやロマニリョスなどは全く記載がありません。グラナダ、カディス、セビージャ、アルメリアなどスペイン南部で活躍した/しているギタレーロ(製作家)のプロフィール、作品、特徴、工房などが紹介されています。しかも18世紀から今日に至るまでの作家をとりあげています。

トーレスにマリンそしてフェレール、僕と同じ年のベルンド・マルティンなど有名どころは一握りで、大部分の作家さんにはお初にお目にかかった次第です。
いやあ、とても新鮮でした。期待どおり、いっぱいいっぱいイメージをもらいました。


アンダルシアのギター製作家


右のページはパコ・デ・ルシア。くわえタバコ。
アンダルシアのギター製作家_中身
2008/01/03

仕事はじめ

新年おめでとうございます。読者の皆さま、本年もよろしくお願いします。

2日間はネコのごとくおとなしくしていたが、今日からは作業服を着て工房へ。初仕事だ。
でも、大音響の機械をブイブイ云わせるわけにもいかないので、まずはまとめて刃研ぎ。そして鉋台の調整。その鉋で響板(写真)を削りだした。

去年習ってきたためかこれまでとはちょっと感覚が違う。削りすぎたらおしまいというのが先行する。1回あたり約30μm厚の鉋屑に設定しているので3回も削れば0.1mmになる。これは結構大きいのである。要所でパソコンで振動解析する。怖いくらい如実に変化しているのがわかる。
しかしそのスペクトルに対して最後に弦を張ったときどんな音色になるのかというのを特定するのは私には不可能である。200年間ギターを作っても無理だろう。まだ力木も貼っていないし、なおかつ今後様々な因子が関わってくるという物理的な理由以上にヒトの感覚というものが複雑だからだ。
ただ、今回のデータによって次回からは音色は無理としても音量とサスティーンはある程度因果をつけられるかも知れない。


そして鉋からスクレーパに持ち替える。最後には空研ぎサンドペーパーでちびりちびりと、『こんなもんかな』と厚みを決定することになる。この時点でギターの基本的なサウンドプロパティが決定される。
今回は従来のオリジナルモデルからほんの少しずつ設計変更することにしている。本人としてはあくまでバージョンアップのつもりなんだが、どうでるか。
そのため4枚の表面板にそれぞれ個性を持たせている。

クラシックギターの響板