2007/12/28

Never compromise!

企業退職して5年。
それぞれの年に色があった。『・・・そう、アレをやったのはあの時だった』。てな具合に結構覚えている。何年かひとまとめのそれまでとは対照的。

今年はやっぱりロマニリョスの講習会参加かな。時間と金で買った経験かも知れないが、半世紀生きてきた中でも出色のイベントだった。
スペインそのものがよかった。また行こう。それににマエストロや弟子のリアム、スティーブに是非とも再会したい。できればギターを持って。スティーブといえば現代ギター誌の某ショップ広告にドイツ読みの名前で写真が載っていた。商用で日本に来たら連絡すると云ってたけど。

そしてアルハープ。
こんなのを作るって誰が想像したろう。
立春の日だった。何の前触れもなく工房にみえて、「ハープが要るんです。是非作って欲しいんです!!」。訳を訊くと、!マークがいくつも要るK先生の熱い思いに打たれた。
試行錯誤しながら今年作ったのは5台。まだまだこれからも製作は続く。
これをきっかけに先生や先生門下の方々と何回もステージに上がることになった。
アルハープは実に様々な人々に見て聴いていただけた。マスコミ各方面からの取材もあった。来年は行政のバックアップで教室も開かれるとか。想像を超えた急展開。

最後のトピック。
それは連れ合いが春から専門校に通いだしたこと。科は違うがわが後輩となった。
一年間続けて修了ることが目標らしいが、案外機嫌よく続いているようである。来年は僕のステージ衣装でも作ってくれるといいんだが。

さて来年。
メインはギター製作展。
弦楽器フェアーも目標のひとつ。
そのためにはやはり Never compromise!(スペインで教わった言葉) が最上の手段かも。

2007/12/21

ギター響板の振動解析

保守的伝統的な工法からちょっと外れるかも知れないが、一種のモノサシと割り切って今回から表面板の振動特性を可視化している。
端材で作った枠に板をぶら下げて消しゴムで叩くという仕掛け。表面板の裏にはピエゾピックアップを貼っていてこれをパソコンのマイク端子に直結する。
あとは解析ソフトがやってくれる。このソフトはダウンロードフリーだが著作権上ここでは公開しない。

響板振動解析装置



2枚の表面板の比較。タッピングする位置と強さは同じで、ピックアップも同一のところに設置している。
横軸は周波数、縦軸はその強度。いずれもスプルースで左が欧州、右が大台ケ原。
板厚はまだ2.65mm均一の状態。
響板の周波数スペクトル


これは波形の比較。横軸は時間である。
縦軸をこれより拡大できないので形の比較はできないが、上のほうが明らかに長い時間振動していることがわかる。
ちなみに目盛を読むと500msは振動している。つまりサスティーンが長いということ。これは耳で聞いてもはっきりわかる。
響板の振動波形

今後、いつものように板厚を整えたとき、さらに力木の調整過程でこれがどう変化するか。
「タップ音をモノトーンにしなさい」というロマニリョスに教わったことにフィードバックできれば面白いのだが。
2007/12/19

塗装の威力!

ロマニリョス講習のギター、最終塗装して10日ほど経ったので弦を張ってみた。
3分塗装のときに比べて明らかに音が違う。特に低音の3本。周波数スペクトルをとってみると倍音列のレベルが高くなっていた。

ホセ・ラミレスⅢ世の著書によれば、『木の音の伝達速度は繊維方向に比べてクロス方向は何分の一しかない』。
まあこれは一般的に云われていることである。
さらに続けて、『これを補うのが塗装膜であり、それが全方向に音を伝達せしめる』。したがって塗膜の硬軟・厚薄で響きや音質がかわってくるという。

そういう原理も作用したのか、良い方向に変化しているのは確かだ。そういえばちょうど一年前に作った楽器もここにきて俄然箱鳴りしてきている。

ラミレスの話の続き。
彼は、『酒精セラックニスは最低である』と断じている。古今東西の名工が良かれと思って使ってきたものをここまで否定するのは彼らしい。
それでは何がいいのかというと、亜麻仁油ベースのニスという。これで塗装したギターをセゴビアに進呈したところ、たいへん気に入ってくれた由。
でも1年経ってもまだベトベトで胴に毛糸をいっぱいくっつけて帰ってきたと述懐している。
2007/12/17

ギターの口輪作り(3):完成

きょうは母校・家具工芸科から5名の方が来房され、楽しい時を過ごしました。ちょうどこの口輪を作っている最中だったのでひとしきり講釈をさせてもらいました。

さて口輪ですが、内外周に細い棒を巻きます。
例によってサークルカッターで切り込みを入れてからトリマーとノミで溝を彫ります。
気をつかうのはサークルカッターの半径の設定。ここで失敗するとオシャカになりますので、別の板でチェックしてから行ないました。
そしてこの写真のように接着剤なしでリハーサルしてから本番に臨みます。
ちなみに棒は5本で、薄いのは0.5mmです。これらを余裕のない溝にうまく納める方法・・・・あるんです。

口輪内外周の埋め込み




完成です。馬蹄形頂部の空間には表面板の端っこを切って埋めています。
口輪全体を表面板面より0.何ミリかとびでるように作っているので、最後にツライチに均します。ドラムサンダーが適任です。
この写真の表面板は例の大台ケ原産のスプルースです。地板はブラックウォールナットです。

けっこう手間隙がかかりましたが、世の大御所のもの比べるとまだまだ序の口でしょう。
皆さん、お手持ちのギターの口輪を眺めてみて、あらためて製作者の思いを感じるのもいいかもしれませんね。

今後どこかで下の口輪を見かけとき、「あっ、これは!」と思っていただければ嬉しいです。

完成したギターの口輪
2007/12/16

ギターの口輪作り(2)

昨日の「馬蹄形の板」に開けた穴に埋め込む寄木を作ります。
材料は写真で大きく写っている2種類の木を貼り合わせたものです。それぞれ45°の小片に切断して両者を貼り合わせた後一辺6.5mmの棒(写真左下のもの)に加工します。
この棒が「金太郎飴」になります。これを薄くスライスすれば、目的の寄木パーツが完成です。
こんなに小さくても木目を活かしたいので目に見える面は木口にならないようにします。

口輪のパーツ



「金太郎飴」を2.5mm厚にスライスする治具です。すごく簡単で、2.5mm厚の板に角ノミで6.4mm四角穴をあけただけです。
この穴に金太郎棒を差し入れてダボを切る要領でノコでを挽くと、パーツの出来あがりです。

口輪寄木のクローズアップ




象嵌したところです。こちらの表面板はドイツ松です。馬蹄はチェリー、寄木はマホガニー、ケヤキ、ホワイトアッシュの3種。
このあと写真に写っている何本かの棒を外周と内周に埋め込むと完成ですが、いま色の組み合わせを検討中です。

口輪はめこみ
2007/12/15

ギターの口輪づくり(1)

ギターの口輪(ロゼット)作りです。しばらくこのシリーズを続けます。

まずサークルカッターで切り込みを入れます。このカッターは自作です。
これで内周と外周をけがいて、その間をトリマーとノミで彫って溝にします。
この表面板は県内大台ケ原のスプルース(トウヒ)、それも25年ものなので気合がはいります。
すごくいいタップ音がして、ずうっと振動したままなので大変楽しみです。裏/横は楓をあわせる予定です。

ロゼット製作:サークルカッティング


溝になりました。
この溝に写真の馬蹄形のものを埋め込みます。二つあるのはチェリーとウォールナット、どちらにするか迷っています。
馬蹄形には四角い穴があいていて、後でここの中に寄木のパターンを象嵌することになります。
ちなみにこの馬蹄はバンドソーと自作の円切り治具で輪っかにして、角ノミで四角穴をあけました。無垢材です。
さらに馬蹄の内外周には、ヘリンボーン柄も含めて何本か細い棒を輪にして埋め込んで全幅20mmちょっとにします。
ネコ?トラ15歳です。このごろ工房に遊びに来ます。カメラ目線ですね。

ロゼット製作:溝彫り
2007/12/10

ちょっと違う音かな

まだ完全に塗装が終わってないが弦を張ってみた。やはりいつもとはちょっと味の違う音色だった。
スペインの香りとまでは云わないが、少なくとも師匠のギターの雰囲気はありそうな感じ。
ロマニリョスギターの作り方の特徴のひとつに「軽量」ということがある。今回のギターも標準サイズだが1460gしかない。
なのでドーンと腹に響くような重厚な音ではない。羽根か花びらのようなひらひらとした、というか、車窓から見えたあの一面のヒマワリ畑とその向こうの禿山、さらにその向こうの乾いた空。みたいな音?

これでこの次作のコンセプトがはっきりした。
ロマニさんありがとう。

2007/12/02

アンントニオ・デ・ロマニリョス

夏にロマニリョスのもとで途中まで作ってきたギターがようやく塗装まできた。ちなみにニスのレシピはマエストロに教えてもらったとおりにしている。

日本に帰ってきたとき、自分と同じようにギターも腹が出てきていた。やはり湿気の差が原因だろう。ブリッジ中心部で通常の倍は盛り上がっていた。ここにきて若干元に戻ってはきているが、致し方がない。その曲面にあわせてすでにブリッジも作ってある。

これがどんな音がするかによって今後に影響する。いま注文いただいているギターの設計、さらに来年の展示会用のモデルも。
実はこのギター、外形はヘッド形状も含めてホセ・ロマニリョスそのものなのだが、内部はほぼアントニオ・デ・トーレスによっている。まさにエスパーニャ。ロマニリョスギターにはそういうのもあるようだ。